ReactのdangerouslySetInnerHTMLを安全に使うために
後日追記
rehype-react 等の rehype エコシステムを使うことでより詳細に安全に制御可能です。
React に素の HTML (string)を挿入する場合は dangerouslySetInnerHTML を使用する必要があるのですが、 dangerouslySetInnerHTML はその名の通り危険な操作であるため、注意が必要です。
特にユーザ入力に基づき DOM を生成するテンプレートを自作している場合は、想定外の DOM 生成にも気をつける必要があります。(これは通常のテンプレートエンジンと同様) なお、 innerHTML と同様の仕様に基づき、 script タグは無効化されます。が、 style タグは有効であるため、注意が必要です。
以下のサンプルコードではボタンのイベントハンドラに任意の JavaScript を仕込むことができます。 (ファイル構成はサンプルの完成系である https://github.com/euxn23/dangerously-set-inner-html-demo を参照のこと)
これらを機械的に行うために、 sanitize-html と jsdom を試します。
1. sanitize-html によるサニタイズ
sanitize-html の場合、デフォルトで多くの tag が disallow になっており、タグそのものが削除されるため、事前に判明している場合は allow を指定、そうでない場合は allowTags = false
を指定し、 attribute の制限を行うことで sanitize します。
なお disallowedTagsMode:
'``escape``'
を指定すると <>
がエスケープされ、 HTML のテキストがそのまま出力されます。デフォルトの挙動は disallowedTagsMode:
'``discard``'
です。
冒頭の通り、 style タグは innerHTML でも有効であり、 React アプリ外にも、グローバルで有効となるため、特に注意が必要です。フォーム等、一部を隠されたりスタイルを変更されると問題となるケース(フォームとユーザ入力 HTML のレンダリングが同居するケースはないとは思いますが)等もあるため、有効化する場合は慎重に行ってください。css injection という攻撃手法もあります。
style を当てる必要がない等、 class を含め全ての attributes が必要ない plain な HTML で良い場合は上記の方法が最適です。必要な場合は(tag ごとにですが) allowedAttributes に指定することで解決できます。 その他、 class 名での制限や inline style の制限もできます。監視されている class 名の指定を防ぐことにより GA への誤情報の送信を防いだり、 submit 誘導等を防ぐこともできます。 また、style attributes を有効にする場合は、 style によるクリック誘導による攻撃等を防ぐためにも、慎重に制限しないといけません。
以下がサンプルコードです。index.html に class=``"``red``"
を指定すると、そちらに波及していることが確認できます。
2. jsdom によるサニタイズ
jsdom では text をメモリ上で HTML として解釈し、 DOM 操作を行うことができます。
この HTML をして解釈 される時点で <script>
タグは本来解釈されるのですが、 JSDOM のデフォルトでは実行されないようになっています。実行する必要がある場合は、 runSctipts:
'``dangeriously``'
のオプションを有効化することで実行できます。
以下は攻撃の例です。
上記の例では <html>
全部を取得していますが、<body>
だけにする、 <style>
も含む、など様々な工夫が容易に行えます。
しかしこのままでは runScripts
の指定がない場合でも DOM 内に定義されたイベントハンドラ関数は実行されてしまうため、イベントハンドラを持つ DOM から attributes を削除する必要があります。
比較
sanitize-html はデフォルトで全禁止側に倒しており、必要なものだけ通す allow list 方式を取っています。 対して jdsom は script タグを除き DOM をそのまま通すようになっています。 jsdom は deny list のような機構は持っていませんが、 querySelector 等を使用して deny 対象の DOM のみをサニタイズすることができます。
ほとんどの attribute を deny する場合、 sanitize-html を使用するのがシンプル、かつ安全になります。 一方 allow と deny のルールが複雑な場合は、 jsdom が向いているように見えます。
一概にどちらが優れている、というのはないため、必要に応じて検討する必要がありそうです。
補足
ShadowDOM でも JS の無効化をできるように思うかもしれませんが、 script タグの実行を防ぐのみで、ハンドラーは実行されてしまうため、このケースでは使用できません。